クラリネット・ライフvol.11
クラリネット講師のありよしなおこです。
今回のお話は「感覚はアテにならない」ということについて。
クラリネットを吹くと音質・音色を太くしたい、芯のある・コシのある音を出したいって思いますよね。
例えばコシを求めてリードを厚くすると、確かにコシが出ます。しかし厚いリードで音の輪郭を出すには噛む力を強くし、息の圧力も増やす必要があります。
ここから注意して仕掛けを選ばないとドツボにはまる危険があります。
しばらくして噛みと息圧の強さに慣れると痛みも感じなくなりますから、リードをさらに厚くしたくなることがあります。噛みが強くなったことで息の通り道が狭くなり、求めていた太さの音でなくなるからです。痛みがなければまだ重いのが吹けると思ってしまいます。
そこで陥りがちなのがリードを厚くし、マウスピースを重くし、リガチャーもパワフルなのを選び…さらにタルやベルを重いのに変え…という際限のない重さ求め。そうなると強く吹き込むために身体に余分な力みが生まれていることも。
噛みを強くするとリードの振動を邪魔することになりますから鳴りが悪くなります。そしてそれを打開しようとさらに強く吹こうと力む。すると力みも振動を邪魔するのでますます鳴らなくなる。
そういう底なし沼、わたしも経験しました。
遠くまで届く響きのある音は、反応の良い仕掛けと健康的で適切な圧力のかけ方から生まれます。
仕掛けは標準的だとされるセッティングにしておいて、リードも同じ番号の中での厚さのばらつきからその時々に合ったものを選ぶ程度で充分です。自分に合った重さ、無理のない反応の良さ、コントロールのしやすさ、そういうことを仕掛け選びの際は大事にしましょうね。
そして身体の感覚として「ここが痛いのが正しい吹き方」だからそれをキープしなくては、という思考は危険です。痛みというのは鈍くなるものです。同じ刺激でも受け続ければ無感覚になります。
感覚ではなく客観的に出ている音を聴くというのも大事なことですよ。
有吉尚子先生|クラリネット教室